「生きる」を考える

斎場にて人生の終焉を見送る 元介護職 兼 介護支援専門員の日常

5年ぶりの帰省

今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」
 夜勤明け、自宅から職場へ主人に迎えに来てもらい、その足で主人の実家へ車を走らせた。私は後部座席で寝たり起きたりしながら走行位置を把握していた。運転が6時間を過ぎて、さすがに疲れたらしい主人に代わり、夕方になってようやく頭も体も目も覚めた私が運転した。
 
 家を出て10時間になる頃到着。
 不思議な事に、手前の角を曲がって実家が見えてきた時、舅が歩いて出てきて「ここに停めろ」と手を振った。「そろそろ着く頃と思って出てみた」と言うから驚いた。

 車を降りるなり、「ご無沙汰してます。」から挨拶が始まった。
 「1週間くらい居なさいよ」と言ってくれて有難いのだが、今回は3泊4日。4日目はまたロングドライブで帰る事になる。

 職場の管理者に1週間くらい休みが欲しいと願い出たのだが、「…3日かな」って。で、最大限休みを有効利用するために、夜勤明けGo!となる訳だ。

 家の中で娘が待っていた。姑に線香をあげてから、
 「じゃ、飯食いに行こうか。」

 そう言って当たり前のように舅の車に乗り込むが、ハンドルを握るこの舅、82歳。
 大人4人で釜飯定食食べて、支払いも舅、82歳。

 驚くなかれ、我が家ではこの舅が一番お金持ちなのだ。
 

 「みんなでトランプやりたい」という娘の希望で、3人がやり始めた。ポンとかチーとかいうのは私は分からない。見ていても早すぎて頭と目が追い付かないのに、82歳の舅は50歳の息子と22歳の孫娘と対等にすごいスピードでトランプをする。

 翌日、「ちょっとジム行ってくるわ」と舅は出かけていった。夜、テレビの音楽番組で最近流行りの若いグループが踊って歌うのに合わせて踊り始めた。「この曲、ジムでよくかかるんだ。こういう振り付け」と言って踊ってみせる。マジか、82歳。

 翌日の夜、名物の店を予約し、アルコールも飲むつもりで歩いて行った。片道2㎞、しゃべりながらさっさと歩く82歳。
 食べて飲んだら、カラオケ。マイクを握って十八番を熱唱。キラキラがたくさん付く上級者だ。
 帰りは通りを渡ってタクシー乗り場へ一直線。
「タクシーまでがセットだから」と言う娘はこの舅とちょくちょくこのコースをたどるらしい。

 私達が帰る日、「じゃ、気を付けて帰りなさいよ」と言い残し、朝8時前にゴルフバッグを抱えて出かけていった。

 「敬老」という言葉、また違う意味で敬いたくなる舅だった。