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ファシスタたらんとした者 単行本 – 2017/6/7
危機としての生を実践し、「戦後」の無惨と虚無に対峙し続けたファシスモが、己の人生の全域を剔出した最後の巨編。懐疑と省察、冒険への意志が導いた思想の堂奥とは。皇室論・信仰論を付す
「自分が保守派に属することを世間に向けて公表する四十歳代の半ばに、『保守の幻像へ』という題名の本を出した。ここでの「ファシストたらんとした者」が抱いているのも、「幻像としてのファシスモ」にすぎぬことを、遅ればせに告白しておこう。もっというと、幻像としての伝統を胸裡に抱懐し、それの極致である死の具体的なやり方を危機に満ちた「今此処」という状況のなかで決断し、それを実践すれば他者に通じるはずだとの幻像を生きる、それがファシスタだということである。」
いま著者が混沌の時代に投げかけるのは、一匹のヒューモリスト(人性論者)がここにいた、という厳然の提示なのである。
- 本の長さ389ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2017/6/7
- 寸法14 x 2.8 x 19.7 cm
- ISBN-104120049868
- ISBN-13978-4120049866
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
「人生は常に勝負と共にあり、敗北の連続だった」思想家・西部邁の思い
手に取るには些(いささ)か不穏当なタイトルかも知れない。
「その指摘は一部当たっていると思いますよ。大体、僕は家庭内においてすら言動が不穏だと家人に言われてきましたからね(笑)。ただ真面目なことを言うと、そもそも『ファッショ』という言葉には束ねる、団結という意味がある。この世に生まれ、他者と気心を通じたいと考える僕は、自然とファシスタになろうとしていたわけです。事実、亡くなったカミさんとも固いファッショを結んでいたように思いますね」
本書は回想録には違いないが、主語は常に「私」ではない。「この男」「彼」「老人」と、第三者の視点からの筆致が小気味良い。私小説、あるいは西部思想の集大成とも言えそうだ。
「時折、『西部はブレない』なんて褒めてくれる方があるけれど、僕からすれば全く嬉しくない評価ですよ。昔はよく、新宿の飲み屋街で『おい西部。転向なんかして恥ずかしくないのか! 』なんて罵声を浴びせられたものだけど、僕は決まって言い返す。『俺はな、蝶なんだよ。変態してるんだよ』って。シモーヌ・ヴェイユを見なさい。スターリニストからトロツキスト、アナーキスト、カソリック……彼女は15年間に何度も転向している。物を考えているとメタモルフォシスしないなんて有り得ないんだ」
6歳で敗戦を経験した。60年安保の闘士だったが、左翼に愛想は尽きた。アカデミズムに失望し東大教授の椅子を降りた。保守知識人の代表格でありながら、イラク戦争を批判したことで、右派、あるいは反左翼からも煙たがられる。振り返れば西部さんの人生は常に勝負と共にあり、敗北の連続だった。
「どうもそういう性分らしいね。負けたからってなんてことないという気持ちは常にあるし、もっと言えば、勝ちたくないとすら思っているフシがあります(笑)。この歳になったからなおさらそう思うけれど、勝ち続けるのを狙う人生だとしても、最後は死んでしまう。死だけは平等だからね」
だが、「どうせ死ぬんだから」と投げやりになるのは、西部さんが最も嫌悪する短絡的な結論だ。
「かつて僕は失語症も同然になり精神的に苦しんだ経験がある。誰にも死があるとわかっていながら、それでもあのニヒリズムの時期に戻ろうとは決して思わない。死へ向けて必死に生きねばいけない。上手くまとめれば(笑)、ファシスタであろうとすることもその実践というわけです」
評者:「週刊文春」編集部
(週刊文春 2017.08.10号掲載)著者について
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2017/6/7)
- 発売日 : 2017/6/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 389ページ
- ISBN-10 : 4120049868
- ISBN-13 : 978-4120049866
- 寸法 : 14 x 2.8 x 19.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 200,001位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 34,469位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について

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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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我々には見えにくい自像の背後も丸彫りにし、我々が置かれた不安定な台座と軸の曲がった構造を浮かび上がらせながら、根本的には我々日本人にとって「真の常識」と「真の良識」とは何かを問う。
文章には多くのカタカナ語が混ざり、人にとっては読みにくいが、腰の据わリの悪い曖昧な翻訳日本語に、あらためて国際基準の定位置を与えようとする為の著者の工夫であり、用語の定義も行間から浮き彫りとなるようにされている。
粘り強く付き合って読むべき価値のある、我らの姿を鏡の様に映し出す、本物の知的著作である。
この本を読むと、波瀾万丈ですが、西部氏の思想の2つの方向性がうかがえます。
絶対的な価値を探求する志向と、一般人(大衆)を低く評価する志向です。
どちらも良い面を含みますが、突き詰めるとファシズムになる。
ちなみに、現代社会では、
・価値(理想)を追いかけ、一般人を尊重する(リベラル?)
*私は理想はやや好きだが、社会問題にも関心があるのでこの立場です。
・価値に関心がなく、一般人を尊重して票を集める(保守の利益政治)
・価値に関心がなく、一般人を軽視・扇動して票を集める(ポピュリズム)
というパターンが多いなかで、異彩を放ちます。
けれども、西部氏にとって絶対的な価値は、マルクス主義にも、アメリカ留学で触れた自由主義にも見つからなかった。もちろん一般人を低評価するので、民主主義は疑わしい。
結局、「歴史的に形成された民族」に、拠り所を求められたのではないか。
でも、「民族」も共同体的な価値(デメリットもある)を含むとはいえ、一般人の集合体ですから、そんなに理想的ではないとも思える。歴史の長さが、文化的価値を純化するわけではない。日本の過去の、超ナショナリズムの破たんをどう認識するのか。(この本の冒頭を読むと、子ども時代は北海道なので戦死者や空襲等の被害が少なく、戦争ではなくアメリカを憎む気持ちになったように解釈できる。)もう一つの難問は、それぞれの民族が自己主張する世界で、自分の民族だけ絶対だと主張する理由が見つけにくいことです。「日本人にとっては日本民族が絶対」という論理は成り立つでしょうか。
もっと深く読むべきでしょうが、とりあえずの感想で失礼します。
西部氏にとっては、論壇を通じて、日本のナショナリズム・右傾化の進展に貢献できたので、かなり充実感のある人生だったのではないでしょうか。日本が「純粋」にならないことに、限界を感じたとしても。
そして、もし天国がイデオロギーごとに複数あるなら、その1つで歓待されておられるでしょう。